なぜそのカットを作ったのか、全部言語化してみた
ニンジャ犯科帳「鍛冶場より愛をこめて」刀鍛冶シーン解説
こんにちは、よかっぱです。
AI動画、動かすだけなら簡単です。
でも、
「雰囲気」が出ない。
なぜか安っぽい。
シーンがつながらない。
こんな経験ありませんか?
ニンジャ犯科帳「鍛冶場より愛をこめて」で、
ぼくは伝説の刀鍛冶師・金鬼(かなおに)が鍛冶場に立つシーンを、
映像から音入れまで一貫して作りました。
この記事では、
なぜ夜空から始めたのか
なぜ神棚を映したのか
なぜSeedance 2.0だけでは成立しなかったのか
などを、1カットずつ全部言語化してみます。
AI動画を「偶然うまくいった映像」ではなく、
「設計して作る映像」にしたい人向けの記事です。
映像を見ながら読んでもらうと、より伝わると思います。
まだ見ていない方はこちらからどうぞ。
【鍛冶場より愛をこめて】
シーン全体の意図
カット解説の前に、まずこのシーン全体で何を伝えたかったのかを話しておきます。
直前のシーン(担当外)では、金鬼の自室が映ります。
ピンク色でかわいい部屋。
この時点では、刀鍛冶師としての凄さは見えていません。
なのでぼくが作るシーンでは、このかわいい部屋とのギャップを見せること。これが最初の設計方針でした。
そのため、工房はガチ目の刀鍛冶の現場にしました。
もう一つ意識したのが、神秘的なトーンを全体に出すこと。
祝詞(のりと)を唱えるシーンなので、神事の雰囲気にしたかった。
そして、このシーンの一番の見せ場は祝詞を唱えるところ。そこへ向けて前後を整えていく、という方針で全体を考えました。
【カット1】夜空から建物外観へ
このシーンの一番最初のカットです。
シーンが変わるとき、まず「どこにいるか」「いつなのか」を見せるのが基本です。
直前まで日中の場面だったので、まず夜空を映して「夜になった」ことを伝えます。カメラが下にパンしていくと、建物の外観が現れる流れ。
耳でも「夜」を感じてもらいたかったので、フクロウの鳴き声を冒頭に入れています。
ドラえもんやアンパンマンのような子ども向け番組でも、
場面が変わるときは必ずこういう外観カットが入ります。
場面転換ではまず外観を映す。
これを意識するだけで、映像の分かりやすさがかなり変わります。
【カット2】工房の全体
外観で「建物の外」を見せたあと、今度は「建物の中」を見せます。
どこにいるかの説明を、外→内と段階的に映す流れです。
緊張感と神秘さを出すために、工房内は月明かりだけにしました。
光源を減らすと、空間に重みが出ておごそかな印象になります。
【カット3】神棚のアップ
儀式が始まる雰囲気を予告するために、神棚をズームアップしています。
効果音として神楽鈴(かぐらすず)を入れました。日本の神事で使われる鈴の音です。
神棚の映像と神楽鈴の音を重ねることで、神秘感を厚くしています。
【カット4】水桶のアップ
緊張感をさらに高めるために、水桶をズームアップしています。
ポチャポチャという水音が、緊張と静けさを同時に出してくれる。
実はここ、けっこう苦労したカットです。
一滴だけポチャっと垂らしたかったのですが、どうしても一滴だけの映像が作れず。
ちょろちょろと流れてしまうんです。結果として2〜3滴落ちる形になりました。
ちょっと悔しいポイントです(笑)。
【カット5】金鬼が炉へ歩く
炉に向かっている動作を見せ、「炉の前で何かやること」を視聴者に伝えます。
AI動画は、カットごとに背景が微妙に変わってしまうことがあります。
同じ場所のはずなのに、背景に映っている物の位置がズレたり、消えたり、変わったりする。
これが視聴者の違和感になります。
AI動画は、「カットの前後で違和感がないか」のチェックが重要です。
今回はこのカットあたりから、背景の整合性を取るのが難しくなってきました。背景合わせは毎回悩ましいです。
【カット6】暗転→金鬼の素顔アップ
このカットは、初めて金鬼の素顔があらわになる瞬間です。
もったいぶりたかったので、直前に黒フェード(画面が一瞬真っ暗になる転換)を入れてから顔アップに入りました。
重要なカットの直前に「間」を入れることで、印象づけることができます。
本当は光の角度が変化して、顔の陰影が動く演出にしたかったのですが、
動画化でどうしてもうまくいかなかったので、ズームアップの処理にしています。
神楽鈴の音を、ここでも入れました。
仮面をかぶっていた状態から素顔があらわになる瞬間に、なんとなく、神に一歩近づくような感覚があって、鈴の音を重ねたくなりました。
【カット7】仮面の正面→ひっくり返し
いきなりかぶると唐突なので、「正面→ひっくり返し→かぶる」という流れを作りました。
ただ、静止画からひっくり返す動作を作るのが地味に難しいです。
AIは仮面の裏側の情報を持っていないので、裏面を勝手に補完して動画化します。
情報のない面を描くわけなので、破綻しやすい。何度かトライした末に成功しました。
また「これから儀式が始まるぞ」という合図として、琴のジングル(短い曲)を入れています。
ここからSeedance 2.0に切り替え
仮面をかぶるカットから、儀式のシーンが終わるくらいまではSeedance 2.0というツールを使っています。
Seedance 2.0は、キャラシートや背景画像を複数渡すと、それらを組み合わせて、いきなり動画を生成してくれるツール。
ダイナミックな動きや、大きなアングル変化が得意で、うまくいくと早い。
一方で細かなコントロールはしづらく、使えない素材もたくさん出るので、何を使うかの選別がかなり必要になります。
【カット8】仮面をかぶる
Seedance 2.0で生成した最初のカット。
カチャッと仮面をかぶって、刀鍛冶師モードに入ります。
【カット9】炉の静止画(伏線)
ここで一瞬、炉を映しています。
Seedance 2.0の中にはなかったので、ぼくが追加で入れたカットです。
この後、祝詞の効果で炉に火がつくシーンがあります。
いきなり火がつくと「何が起きた?」になってしまうので、先に静止状態の炉を見せて、視聴者の脳内に「炉」を置いておく。
あとで重要になるものを、先に一瞬見せることで、映像につながりが生まれます。
【カット10】祝詞を唱える(一番の見せ場スタート)
「掛けまくも畏き(かけまくもかしこき)……」で始まる祝詞を唱えながら、炉に向かうカット。
このシーン全体の一番の見せ場、スタートです。
音声について、通常はキャラボイスにElevenLabsを使っています。
でもこの祝詞をElevenLabsに読み上げさせたら、棒読み感がひどくてカッコ悪かった。
なので実はこのカットだけ、Seedance 2.0から出てきた音声を使っています。厳密には他のシーンと違うボイスになっていますが、金鬼はセリフが少ないので違和感は出ないと判断しました。
Seedance 2.0はボイスの種類を指定できないので、何度も生成して「一番いい感じのもの」を選ぶ形になります。
しかも映像と音声は別々に生成して組み合わせています。
映像は良くても音がダメ、ということが多いので。
音声にはリバーブ(音を響かせる効果)をかけています。
神聖な空間に声が広がる感じと、おごそかさを出したかったので。
【カット11】印を結ぶ手
祝詞を唱えながら、手で印を結ぶカット。
スピード感を出しつつ、次々と結ぶ印を変える演出は、Seedance 2.0だからこそできました。
ちなみに、なかなかカッコよく動いてくれなかったので、何回も生成し直しています……。
【カット12】祝詞のつづき
このあたりで、背景をしっかり作り込まなかったツケが回ってきました。
Seedance 2.0で背景の整合がとれないカットが多く出てしまったのです。
対処として2つやっています。
ひとつはビネット効果(画面の四隅を暗くする処理)。
周囲を暗くすることで背景の情報を削り、不整合が目立ちにくくなります。おごそかな雰囲気を補強できる副次効果もありました。
もうひとつはズームアップして背景を映らなくすること。
キャラを大きく映すことで、なるべく背景を隠すような構図にしています。
ちなみに、ちゃんと背景を作り込んで読み込ませても、Seedance 2.0で動画化すると、背景が変わってしまうことも多々あります。
AI動画は「背景の整合」に本当に苦労します。
今回はビネットとズームでなんとか乗り切りましたが、根本的な解決ではないので今後の課題です。
【カット13】炉に火がつく
祝詞のパワー(忍術)で、炉に火がつきます。
カット9で炉を映しておいたのは、このためでした。
【カット14】炎を見つめる(ローアングル)
金鬼と炎を両方含めたカットを入れて、金鬼が炎を見ていることを伝えます。
【カット15】目元のアップ
炎を見つめる目元をズームアップしたカット。
火の粉がわずかに目元で舞い、瞳に炎の輝きが反射しています。
カット13〜15までの一連のカットで、金鬼が炎に注目していることをたっぷりと伝えています。感覚的には、金鬼が炎を自分の身に宿すようなイメージです。
【カット16】きびすを返す(補完カット)
このカットはSeedance 2.0では出なかったので、
静止画を作りKlingで動画化して、つなぎとして入れています。
このカットがないと、正面を向いていた金鬼が、次のカットでいきなり後ろ向きに歩き出すことになります。
それでは唐突すぎる。
Seedance 2.0だけではつながりが悪い場所は多々あるので、こうやって補完カットを作って差し挟むのが現状の使い方になっています。
【カット17】金鬼が歩いてフェードアウト
作業を始めるために、金鬼が歩いてカメラから外れ、フェードアウトしていきます。
【カット18】小屋の外観→夜空へパン
静止画からKlingで動画化したカットです。
夜空に向かってカメラがゆっくりパンして、フェードアウト。
ここでは刀を打つ効果音を入れていますが、実際に刀を打つ映像は映していません。音だけで「打っている」と伝わるようにしています。
この金槌の音、フリー素材ではいいものが見つかりませんでした。
なのでSeedance 2.0で「刀を打つ動画」を生成して、そこから効果音だけを取り出して使っています。
リバーブをかけて、森の中に響く感じにしました。
今回気づいたコツがあります。
Seedance 2.0を素材として使うときは「BGM・ボイスは無し、効果音のみ有り」にすると使いやすい。
効果音の質がかなり良くて、そのまま使えます。
このシーンで意図したこと
振り返ると、設計は3つでした。
①かわいい部屋とのギャップ
かわいいものだらけの部屋の直後だからこそ、刀鍛冶の工房のガチ感が際立ちます。
②神秘的なトーンを全体に通す
神楽鈴、月明かり、祝詞のリバーブなど。
これらは全部、神秘的でおごそかな演出をするために使っています。
③祝詞のシーンを一番の見せ場にする
前後のカットはすべて、祝詞を唱えるシーンを強調するために設計しています。
Seedance 2.0については、使い方のコツが見えてきました。
他の素材と合わせやすいように、効果音のみで生成すること
背景情報をしっかり渡さないと破綻するので、気をつけること(今回はビネットとズームアップで対処しました)
つながりが悪い場合は、Klingで補完すること
今回、事前に刀鍛冶の映像をいくつか見て雰囲気を研究しました。
あと、大学時代に鋳金を経験していたので、金属を熱する場の雰囲気は体で知っていました。
その感覚が、今回のシーン作成に活きていたと思います。
ぼくも最初から、こういうことが意識できていたわけではありません。
今回のシーンも、実際は「なんか安っぽい」「なんかつながらない」を繰り返しながら、少しずつ気づいていきました。
でも逆に言うと、「なぜ違和感が出るのか」を考え始めると、AI動画は一気に伝わりやすくなっていきます。
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最後にお知らせです。
Substackの記事では、こういう「なぜ違和感が出るのか」「なぜ届かないのか」という試行錯誤を、制作途中の失敗も含めて継続的にまとめています。
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AIツールの詳しい使い方解説というより、
「なんか違う」
「うまく届かない」
「自分の感覚がおかしい気がする」
そういう感覚を、どうやって”届く形”に変えていくかを整理しています。
最初から全部うまく作れなくても大丈夫です。
「なんか変だな。なんでだろう?」を言語化し始めると、作品は少しずつ変わっていきます。
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ではでは〜。


























